クールな同期は、私にだけ甘い。


萩原くんの隣にいたのは、企画部のエース・星野(ほしの)美咲(みさき)さんだった。

長身でスタイルが良く、セミロングの髪を流れるようなウェーブヘアにした彼女は、まるでファッション雑誌から抜け出してきたような華やかさがある。

企画のプレゼンでも常に的確な意見を述べ、その実力は誰もが認めるところだ。

星野さんと萩原くんはプライベートでもよく一緒にいると社内で噂されており、二人の間には親密な空気が漂っていた。

「その事業計画だと、ターゲット層の年齢設定が広すぎて、具体的なアプローチが弱くなるんじゃないかしら?」

星野さんが萩原くんの企画を指さし、鋭い意見を述べる。

萩原くんは彼女の言葉にじっと耳を傾け、時折メモを取っていた。

普段の飄々とした彼からは想像もできないほど、真剣な横顔だ。

二人の間に流れる張り詰めた空気に、私は思わず息をひそめた。

そして、萩原くんが星野さんに見せる、私がこれまでに見たことのないような楽しそうな笑顔。

その光景が、私の胸の奥にチクリとした鋭い痛みを走らせた。心臓をぎゅっと掴まれるような、不快な感覚だ。

私は慌てて彼らから視線を逸らし、目の前のご飯に集中しようとするが、なぜか味がしない。

二人の楽しそうな声が、食堂の喧騒の中でもやけに耳に残り、私の心臓は不規則なリズムを刻んでいた。