夏の熱気を吸い込んだアスファルトも、朝晩には微かな涼しさを帯び始めた。
秋の気配が、ようやく街の景色に溶け込み、空気もどこか澄んでいく。
萩原くんとの共同作業だった、社内報ウェブ版リニューアルポスターのデザインは、無事に完成した。
彼の的確な指示と、私の感性を信じて任せてくれる姿勢は、想像以上に心地よく、萩原くんとの初めての共同作業は、私にとって大きな学びとなった。
データ分析に基づいたターゲット層の明確化、そしてデザインがどれだけ成果に繋がったかを測る「効果測定」の重要性……。
今まで漠然としていたデザインの裏側にある論理を、彼は惜しみなく教えてくれたのだ。
カラフルで目を引く私のデザインは社内で評判を呼び、ポスターは好評を博した。
ウェブ版社内報のアクセス数も、前月比で飛躍的に増加したと先輩から聞いた。
私のデザインが萩原くんの戦略と結びつき、具体的な成果を生み出したことに、深い達成感を覚えた。
そのおかげで、私と萩原くんは「最高の同期コンビ」と呼ばれるように。
だけど、私の心には、萩原くんへの募る恋心がある一方で、漠然とした不安が膨らんでいった。
数日後の昼下がり。今日のランチは、なんとなく一人になりたくて、いつもより少し時間をずらして食堂へ向かった。
賑わうフロアで、私は無意識に萩原くんの姿を探す。
ちらりと視線を向けた先に、彼の整った横顔が見えた。いつもの席で、誰かと楽しそうに談笑している。あれは……。



