クールな同期は、私にだけ甘い。


彼女は、腰まである艶やかな黒髪を揺らし、上品なワンピースに身を包んだ、誰もが振り返るような華やかな美人だ。

彼女は萩原くんに何やら書類を見せながら、しきりに笑顔を向けている。萩原くんも穏やかな表情で応じている。

楽しそうに言葉を交わす二人の姿に、私の心臓がドクン、と大きく鳴った。

胸の奥に、今まで感じたことのない、チクリとした痛み。それは、恋心を自覚したからこそ感じる、苦しい感情だった。

彼が他の女性と親密に話す姿を見るだけで、こんなにも胸が締めつけられるなんて。

このとき私は、萩原くんの隣は自分が独り占めしたいと、思ってしまった。

今、彼の隣にいるのが私ではないことに、言いようのない寂しさが募る。


それから、しばらく経ったある日。

私が担当したウェブサイトデザイン案の成功が社内で話題になり、その実績が評価された。

そして、萩原くんが企画する次のプロジェクト、社内報のウェブ版リニューアルポスターのデザイン担当に、私が抜擢されたのだ。

嬉しいけれど、正直不安もある。そんな私の複雑な胸の内を、萩原くんは敏感に察しているようだった。

「大丈夫。桜井のデザインなら、きっと最高のポスターになる」

休憩中のオフィスで、萩原くんは真剣な眼差しで私にそう告げた。

「そうかな?」

「ああ。だから、自信持てよ」

彼の言葉は、まるで私のデザイナーとしての魂を揺さぶるかのようだった。

嬉しい半面、彼の期待に応えたいと強く思う。

今まで積み重ねてきた努力と、萩原くんがくれた助言を全て注ぎ込もうと、心に誓った。

彼との共同作業は、私たちの絆をさらに深く、確かなものにしてくれるだろう。そう、私は強く感じている。

このプロジェクトを成功させることで、少しでも萩原くんの役に立ちたい。

そんな純粋な気持ちが私の内に沸き上がり、彼ともっと一緒にいたいという願いが、私の原動力になっている。