ある日の昼休み。食堂で、萩原くんと並んでランチを食べているときのこと。
近くの席から、ひそひそと女性社員の話し声が聞こえてきた。
「ねぇ。萩原くんって、桜井さんと仲良いわよね」
「そうよね。最近、二人でよく話してるところを見るわ」
「やっぱり、同期だからかしら? でも、なんだか特別な感じしない?」
「ええ、まさか! 萩原くんって、彼女とかいるのかな……」
私は手のひらを握りしめる。
社内での噂話が耳に届くたび、私の胸はざわついた。
隣に座る萩原くんは、何も気づいていないかのように、静かにランチを続けている。
今、私だけが彼を意識している状況が、なんだか切なくてもどかしい。
ランチを終えた午後。休憩しようと自販機でコーヒーを買っていると、少し離れた場所に萩原くんが立っているのが見えた。
「はぎ……」
私が、彼に声をかけようとした瞬間……
「萩原さん!」
別の部署の女性社員が、満面の笑みで萩原くんに近づいていく。



