彼は静かに私を見つめ、口元に微かな笑みを浮かべている。その瞳は、まるで「ちゃんと見てたよ」と言ってくれているようで。
萩原くんが小さく親指を立てる仕草に、私は再び胸が熱くなった。
その日の夜。私は自分の部屋で、久しぶりに心地よい疲労感に包まれながら眠りについた。
机の上には、今日の昼間に最終承認された企画書のコピー。
その隣には、萩原くんからもらった「よく頑張ったな」と書かれた、メッセージ付きの栄養ドリンクの空き瓶があった。
それは、私にとって何よりも尊い努力の証。
このスランプを乗り越えられたのは、間違いなく萩原くんのおかげだ。彼がいてくれたから、私はまた前を向けたんだ。
数日後。残業でオフィスに残っていた私。
喉が渇き、デスクのペットボトルを手に取る。けれど、疲労のせいか、キャップが固く締まっていて、どれだけ力を入れても開かない。
「ん……っ!」
何度もひねるが、キャップはびくともしない。
思わず舌打ちが出そうになった瞬間、スッと横から手が伸びてきて……
「えっ」
ペットボトルを、誰かに奪われてしまった。



