「……休日は、たまに陶芸教室に行っているんだ。あの、無心に土をこねている時間が、頭の中を整理するのにちょうど良いというか。集中して土と向き合っていると、余計なことを考えずに済むんだ」
彼の口から出た「陶芸」という言葉に、私は目を見開く。
「えっ、萩原くんが……陶芸!?」
あのクールでスマートな萩原くんが、土をこねて、無心になっているなんて。
その意外な告白に、私は驚きとともに、彼の繊細な感性、そして完璧さだけではない、人間らしい一面を垣間見た気がした。
彼の新しい一面を知るたびに、萩原くんという人が、私の心の中でどんどん膨らんでいく。
気づけば、彼のことが気になって仕方がない。
◇
「桜井、おめでとう」
そんな日々の積み重ねの中、私のウェブサイトデザイン案は、ついにクライアントの最終プレゼンで承認された。
諦めかけていた企画が通り、この一年、長らく陥っていたスランプからようやく抜け出せた瞬間だった。
「ありがとうございます!」
会議室にいた全員が私に拍手してくれ、担当の先輩が「桜井、よくやった!」と肩を叩いてくれたとき、私の目からは自然と涙が溢れ出した。
嬉しさ、安堵。そして何よりも、この一年間の苦悩が報われた達成感に包まれた。
体がじんわりと温かくなり、心の重荷がふっと軽くなるのを感じる。
そして私が真っ先に視線を向けたのは、同席していた萩原くんだった。



