そんなある日のこと。萩原くんが、先日訪れた美術館の話を私にしてくれた。
「最近、面白い現代アート展があったんだ。企画のインスピレーションにもなるし、桜井もデザインやってるなら、きっと楽しいと思うぞ」
彼の口から出る意外な趣味の話に、私は少し驚く。
「へぇ、萩原くんが美術館に。意外だね」
すると、萩原くんがふと自分の手のひらを見つめた。
彼の指の腹には、わずかに灰色がかった土のようなものが、うっすらと残っているように見える。
あの土は、何だろう?
「ねえ。もしかして、何か別の趣味でもあるの?」
気になった私が尋ねると、萩原くんは一瞬、戸惑った顔をしたあと、少しだけ頬を染めて、照れたように微笑む。
「実は……」
いつもクールな彼の表情が、ふっと柔らかくなり、私の胸は再び小さく高鳴る。



