クールな同期は、私にだけ甘い。


彼はコーヒーカップを片手に腕を組み、資料を指差す。

「例えば、この背景の色合い。もう少し、朝焼けのようなグラデーションにして、清々しさと始まりを表現してみるとか」

萩原くんの言葉に、私はハッと息を呑んだ。

彼の提案は、いつも私が凝り固まった思考で考えていたデザインの枠を、軽々と超えてくる。

「なるほど……」

彼は顎に手を当てて、考える素振りを見せる。

「あるいは、文字のフォントをより丸みのあるものに変えて、親しみやすさを出すのもいいかもしれない」

萩原くんの言葉はいつも的確で、私の凝り固まった思考を解き放ち、新しい扉を開いてくれる。

論理的でありながら、どこか温かい彼の言葉は、私の心をそっと、そして確かに支えてくれた。

彼のアドバイスがなければ、私はまだ暗闇の中で出口を探し続けていたかもしれない。そう思うと、彼への感謝の気持ちが募るばかりだった。



仕事の相談だけでなく、私たちは次第にプライベートの話もするようになった。

休日の過ごし方、好きな本、学生時代の思い出。萩原くんは、クールな見た目とは裏腹に、意外とユーモラスな一面もあることを知った。

仕事の合間の雑談や、残業後のオフィスで交わす他愛もない会話は、いつしか私にとって、日々の疲れを癒してくれるかけがえのない時間になっていた。