クールな同期は、私にだけ甘い。


萩原くんとの仕事の相談は、その後も自然と続くようになった。

休憩時間や残業後のオフィスで、彼と話す機会は増え、いつしか私は、自然と彼の元へと足が向かうようになっていた。


ある日の残業中。給湯室に漂う挽きたてのコーヒー豆の香りが、疲れを少しだけ癒してくれる。

私は、隣に立つ萩原くんに、思い切って尋ねた。

「ねえ、萩原くん。このウェブサイトのコンセプトどう思う? ちょっと大袈裟かな?」

萩原くんはマグカップを片手に、私の持つ資料に視線を落とした。

「いや、悪くないんじゃないか? むしろ、それくらい大胆なほうが、消費者の心を掴むかもしれない。ただ、桜井のデザインと合わせて、もう少しそのメッセージが伝わるような視覚的なインパクトと連動させると、より芯が強くなる」

うわ、近い……!

萩原くんが顔を近づけてきて、私の髪の毛先が彼の肩に触れそうになる。その拍子に、彼の指先が私の肩に微かに触れた。

──ドキリ。

指先から伝わる微かな体温に、心臓が小さく跳ねる。

体中の血が、一瞬にして沸騰したように熱くなった。この胸騒ぎは、一体なんだろう。

「し、視覚的なインパクト……。例えば?」

慌てて問い返すと、萩原くんは私の動揺など全く気づいていないかのように涼しい顔で答える。

「そうだなあ……」