クールな同期は、私にだけ甘い。


それは、昨夜と同じ。温かくて、優しい手の感触。

「大丈夫。桜井の努力は、きっと報われるよ。俺も企画を立てる中でよくあることだ。完璧を目指しすぎなくていい。クライアントの言葉の裏にある『本当に求めているもの』は何なのか、もう一度掘り下げてみたらどうだ?」

「本当に求めているもの……」

「ああ。例えば、その新商品の『爽快感と繋がり』って、消費者に具体的にどういう体験をさせたいのか、言葉にしてみるとか」

萩原くんの温かい手の感触と心に響く言葉に、私は今まで感じたことのない、安堵感と温かさを覚えた。

昨日あれほど張り詰めていた心が、彼の言葉と手のひらを通して、少しずつ解きほぐされていくのを感じる。

まるで、凍っていた心が、春の日差しを浴びるようにじんわりと溶けていくようだった。

萩原くんの真剣な眼差しは、私を信じ、励ましてくれている。

それが、どんなに心強いことか。彼の言葉一つ一つが、私の心に深く染み渡っていった。

その日以来、私と萩原くんは仕事の休憩時間や残業後のオフィスで、自然と会話を交わすようになった。

彼の助言や励ましは心に深く響き、私は少しずつ自信を取り戻していくのを感じた。

萩原くんは私にとって、ただの同期というだけでなく、心の支えとなり始めていた。

そして、時折私に向けられる彼のクールな瞳の奥にある特別な光に、私の胸は密かにざわめく。

秋の気配が深まるように、私たちの関係もゆっくりと、けれど確かに変わり始めていた。