ゲームへの参加が決まった日の翌週。20時を回った頃に、私と美月は学校目指して出発した。
 男女揃って夜の学校に、なんてのは叱られるに決まってるから、親には『聖歌の家でお泊まりする』って言ってる。

 勿論、聖歌と口裏を合わせているから、多分バレない!

「それじゃ、聖歌を迎えに行きましょうか」

「らじゃー」

 どちらかと言えば、学校でどんちゃん騒ぎする、ってのがメインになりつつあったので、私達はお菓子をいっぱいに詰めたリュックサックを背負っている。

 行きがけに聖歌と合流し、三人揃って夜の学校に到着した。

「暗っ……」

「でも、まだ職員室の明かりついてるね」

「それじゃ、鍵を拝借しましょうか」

 まだ鍵の開いていた昇降口を堂々と通り、動きやすい体育館用の靴に履き替え、職員室に辿り着く。

 この時間、教室の鍵は施錠されている。だから鍵を貰う必要があるんだけど、職員室に保管されてるんだ。で、先生は大抵残業中なんだよね。

 ってことで、ここは成績優秀な美月さんの出番です!

「失礼します」

 いつも通りの平坦な声で扉をノックし、がらりと開く。
 そっと扉の影から覗くと、職員室には見覚えのある先生が一人だけデスクに向かっていた。

 あの少しだけ薄ーくなった後頭部は……社会科の先生だ。

「ん? ああ、羽田じゃないか。どうした、こんな時間に」

「明日までの課題を置き忘れてしまって。暫く教室の鍵をお借りしてもよろしいでしょうか」

「一人で来たのか? 危ないだろう」

「姉と友人も一緒です」

「そうか。2年A組だな? ちょっと待っていろ」

 先生は奥の方に消えて、少し経って扉の傍に戻ってきた。

「私は10時までいる予定だから、それまでには返すように。校舎内は暗いから気をつけるんだぞ」

「ありがとうございます。失礼しました」

 扉を閉めた美月の手の中には、教室の鍵が握られている。それを確認して、私はクラスのグループトークに『鍵ゲット!』とメッセージを送信した。