嘘だ……だって私、美月と一緒に生まれてきたんだ。記憶だって残ってる。
 何がどうなって……。

「──まさか」

 私はスマホを取り出して、急いでカメラロールを確認する。
 美月がいたことは、全部写真が記録してる。だからそれを見れば……っ。

「無い、無い……なんでっ」

 いくら遡っても、何度確認しても、カメラロールの中に美月が写っている写真は1枚も無かった。
 それどころか、A組の皆が写っている写真すら残っていない。クラスのグループトークも消えている。

 ……持っていたはずの飛翔と聖歌のスマホも、無い。

 私の精神がおかしくなったの、なんて馬鹿げた妄想が脳裏を過ぎる。でも、全身にのしかかる疲労と、脳に刻まれた思い出と──膨大な感情が、否定せんと踊り狂う。

 認めたくない仮説が、頭にすとんと落ちてきた。

「存在が……消されてる、の?」

 そんなのって……有り得るの? ゲームに参加して、失格になったら、今まで生きてきた軌跡全てを奪われて……!

 ……なら私は? 私はどうなるの?

 急いで自分の部屋に戻り、私はありとあらゆる学校の私物を確認する。

 教科書も、使っているノートも、文房具も、カバンも……A組の残滓を求めるように、全てをこの目に焼き付ける。

 そして、理解してしまった。

「2年、B組……」

 乱雑に掴んだ国語の教科書。裏面に記された自分のクラスの表記を、私は絶望に染め上がった指先でそっと撫ぜた。

 ──皐月中学校2年A組というクラスの存在ごと、消されてしまっているのだと。




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