どれだけ意識を失っていたんだろう。

 唯一の生き残りになった私は、A組の教室で、輝かんばかりの朝日に照らされて瞼を開けた。

 教室には私以外誰もいない。それどころか、ゲームを始める前に移動させた机すら元通りに──ううん、少し違う。
 まるで使われていない空き教室のように、無造作に整頓されていた。

 一つにまとめていた荷物の山も、私のもの以外無くなっている。

「……帰ろう」

 何も考えられない状態の中、私は校門を通り抜けて、一人で自宅に戻る。

 さっきまでは暗闇が怖くて仕方がなかったのに、今は寧ろ、眩しい朝日に嫌悪感が生まれていく。

 美月がいないこと。そればかりか、A組の生徒が一夜にして失踪してしまったこと。
 それら全てを背負い込んで、私は玄関を開けた。

 静まり返った家の中は、人気がなく整然としていた。
 時間を確認すると朝の6時だった。土曜日だし両親はまだ起きていない。

 二階にある自分の部屋へ向かった時、ふと、美月の部屋が目に止まった。
 私の部屋の隣にある美月の部屋。双子でも、流石に個室が欲しいってお願いしたんだよね。

「……」

 美月の存在を、少しでも感じたかった。美月の部屋で遊んだり、勉強したり……そんな他愛のない記憶が次々と脳内を駆け巡る。
 そっと部屋の前に立つ。震える指先を見つめながら、静かに扉を開く。

 ──部屋の中には、何も無かった。

「え……」

 勉強机も、お揃いのベッドも、本棚も、クローゼットの中も、何もかもが無い。
 まるで──元々、この部屋は使われていなかったみたいに、空虚だけがそこにあった。

「なんで……」

 美月が生きていた証が、丸ごと全て奪われてしまったみたいで。
 よろめきながら部屋の中に入り、散々探し尽くしても、何も変わらなくて。