「このゲームは……端的に言えば、呪いの具現」

「呪いの……具現?」

 オカルトチックな単語に、怪訝に思って首を傾げる。

「……半年前に、隣の県で幼稚園児が大勢誘拐されて、多くが遺体で見つかった事件、覚えてる?」

「あ……」

 美月が話していた事件だ。本当に関わりがあったんだ……。
 でも、それとゲームが結び付けられる理由はピンと来ない。

「知ってるけど、詳しい話は……知らない」

「そう……その事件の犯人が私の親友なの」

「……えっ?」

「ううん。親友だった、なのかな」

 寂しげな影が華ちゃんを覆う。けど、心配よりも前に衝撃が私を打ちのめす。

 華ちゃんの親友が、事件の……幼稚園児達を殺した犯人? 嘘でしょ?
 心底信じられない……けど、真剣な目をした華ちゃんが、虚言を吐くとも到底思えなかった。

 それに親友って……もしかして私と同じ中学生?

「それってどういう……」

「親友の……真帆は、クラスメイトからいじめを受けてて。私にも裏切られて、本当に……色々あって。それでストレスの捌け口になったのが、無垢で無知で、無邪気な……幼稚園児だったの」

「……」

「目撃情報なんて殆ど無かった。真帆は……頭が良くて、機転の利く子だったから」

 人間の、他人を貶めるような黒い闇を一身に受け止めてきた結果、受け継ぐように誰かを傷つける。おぞましいほどどす黒く、報われない現実に吐き気すら感じた。

「その……真帆さんが犯人だって知って、どうしてまだ捕まっていないの?」

「真帆は既に亡くなってるの。ちょうど半年前に、交通事故で」

「……そう、なんだ」

 憂いと哀れみを綯い交ぜにしたように、華ちゃんは笑みを落とす。
 いじめと殺人。その行く末が交通事故……苦しいほど嫌な気分だ。

「交通事故は、当時幼稚園児だった弟を庇って起きたの」

「……」

「皮肉だよね。幼稚園児を殺していた人が……幼稚園児を守るために死んだなんて」

 胸がぎゅっと締め付けられる。想像もつかないほど壮絶な人生に、私は独り苦しみに喘ぐことしか出来なかった。

 でも……それが、一体どうして、『カミサマ鬼ごっこ』に繋がるの?