「……ねぇ、『カミサマ』って何? 華ちゃんは何者なの? 皆を……A組の皆を返して!」

「……」

 私の怒号に怯えるように、華ちゃんはたじろぐ。後ろに佇む大勢の子どもたちの、まるで人形のような笑顔が、少しずつ消えていくのが視界に映る。

 一瞬、心の奥底がひやりと冷えたけど、そんなことに構っていられない。

「お願い、返して……皆を、返して……!」

 今しか出来ない思い出を作りたかった。ただ……それだけだったのに。

 もし、華ちゃんが偶然、ゲームのことを知っていたんだとしたら。ゲームが実在することも、最後の一人以外失格になることも、教えて欲しかったのに。

 そう考えて、私の頭に、ふっと一つの記憶が甦る。

 ──ゲームへの参加を決めた日、華ちゃんだけが唯一、ゲームへの参加を反対してた。

「は……」

 ぽつり、と声が漏れる。自分でも驚くほど自然に零れ落ちた声に、華ちゃんが戸惑うようにこちらに小さく手を伸ばす。

「華ちゃんはあの時、止めようと……してたの?」

「……」

「……このゲームの……何を知ってるの? 本当に『カミサマ』……なん、だよね?」

「……うん。そうだよ。私が『カミサマ』」

 たどたどしい疑問にこくりと頷く華ちゃんに、私は理解が追いつかずに呆然と虚空を見据える。

 華ちゃんはきっと、智也が言い出した時点でゲームのことを知ってたはず。でも、一人だけ拒絶して、言いくるめられて参加して……ゲームでは『カミサマ』として動いていた。

 何がどうなって……。

「──話があるの」

「……」

「これからのことも、ゲームのことも……私が、何者なのかも。私が知ってること全部、話すから」

 静かに燃え滾るような瞳を私へ差し向けた華ちゃん。
 ……多分、華ちゃんにも何か事情がある。直感的にそう思った。

 ゲームのこと、華ちゃんのこと、それから……これからのこと。
 聞かなきゃいけない。だって私は、飛翔に、美月に──皆に託された、最後の一人だから。

 どうやったって、皆は戻ってこない……。そんな時、きっと美月なら『いつまでも塞ぎ込んでないで、前を向いたら』って言うはずだ。分かるよ、ずっと一緒に過ごしてきた妹だもの。

 だから……私も、覚悟を決めなきゃいけないんだ。

 知らず知らずのうちに握り締めていた拳を弛ませ、私は頷き返す。

 安堵したように息をつく華ちゃんは、扉の傍らに腰を下ろした。
 疲れているのか顔色は優れない。それを叱咤するように一息吐き、華ちゃんは口を開いた。