口をついて出た言葉に、華ちゃんは一瞬苦しそうに目線を下げ、そして顔を上げる。
 辛く、苦しみに満ちた微笑みとともに、華ちゃんは頷いた。

「そう。私が今回のゲームの『カミサマ』だよ」

 頭が、重い鈍器で殴られたような、目眩がするような衝撃が走り、その場から微動だにできなかった。
 心に残っていた僅かな温もりすら、華ちゃんの言葉が奪って、私を苛む。

 本当に『カミサマ』なの、なんて陳腐な疑問をかき消すように、華ちゃんは依然として微笑んでいる。

「どう、して……こんなことを」

「……」

 恐怖と動揺に支配され、私の声は酷いくらいに震えていた。

 華ちゃんはそんな事を気にも止めていないのか、それすら予想していたのか──きゅっと唇を結び、真剣な眼差しを私へ注ぐ。

 ……嫌だよ。そんな目で見ないでよ。
 だって……華ちゃんが皆のことを、最初に裏切ったのに!

 ゲームは実在してて、こんな……一人しか残れないって、それを分かっていたの?

「私達のこと……見捨てたの?」

「……違う。違うの」

「嘘。じゃあ何で『カミサマ』なんてしてるの? 私達が逃げて、失格になるの……楽しんでたの!?」

「そんなことない……っ」

「ならどうして……!!」

 どうして……そんな酷いことが出来るの? 私達のこと、クラスメイトとすら思っていてくれなかったの?
 それとも、華ちゃんにとって、私達は切り捨てて当然だったの?

「説明してよ、こんなことしてる理由を。A組の皆とはもう……会えないの……っ!?」

「っ……それは」

 華ちゃんの口元に浮かぶ僅かな笑みが、狼狽へとすり変わる。答えを聞かなくてもそれだけで理解出来てしまった。

 ……ああ、やっぱりもう会えないんだ。分かってはいても、頭の中を埋め尽くす"怒り"の二文字は消えてくれない。