枯れ果てたはずの涙が止まらない。
 感情は明確に感じられないのに、涙腺だけは素直で、とめどなく涙が零れ落ちる。

「美月……みづきぃ……っ」

 ただ、私の声だけが反響し、空気に溶けて消えていく。

 同じこと考えるなんて、やっぱり双子なんだね……今はそれがちっとも嬉しくなくて、いっそ双子じゃなければ良かったのになんて思う。

 そんなこと、絶対あるはずがないのに。

「最後に、笑うなんて……ほんと、らしくないこと……しないでよぉっ……」

 溢れる嗚咽を慰めてくれる人はいない。ただ、胸が締め付けられて、喉が灼けるように熱くて、痛くて。

 ……寂しいよ。すっごく寂しくて、辛くて、何も考えられない。

「……帰りたい」

 幻想も、そこにあった美月の残滓も薄れて、私は何かを求めるように呆然と立ち上がる。

 扉は鬼によって無理矢理破壊されたらしく、粉塵を撒き散らしながら乱雑に倒れている。

 邪魔だ、なんて陳腐な言葉をぼやきながら、グラウンドへ足を踏み入れる。
 広大なその空間には、鬼らしき姿も、人影ひとつも見えやしない。

 A組にいたい。その一心で困憊した体を引きずり、息を切らしながら教室に辿り着いた。

 あれだけの距離をのろのろ歩いていても、鬼には一度も遭遇しなかった。本当にゲームが終わったんだと実感しながらも、同時に絶望感が私を襲う。

 扉を開けると──そこは伽藍堂。後ろに寄せられた机達が出迎えるだけだった。

 放課後のような、喧騒が消え去った後のもの寂しさはない。それよりもずっと窮屈で、気持ち悪い感覚が全身にまとわりついてくる。

 私は教卓に寄りかかるように膝を抱えて座り込む。

 ゲームが終わると告げられてから、『カミサマ』の放送は一度も流れなかった。
 "ご褒美"なんていうのも結局、体のいいまやかしだったんだろう。それに『カミサマ』から与えられるものに縋りたくもなかった。