湖畔に一滴の雫が零れ落ち、美しい波紋を描くように──美月は告げた。
 まるで死に喘ぐような儚さに、思わずスマホを取り落とし、かたんっと床に転がり落ちる。

「なに……どうしたの、美月。……らしくないよ」

「そう? 意外だった?」

「意外っていうか……うん」

 くすりと力無く笑う美月。いつもそんな風に私のことを思っていたなんて……知らなかった。

 私の取り柄は、底なしの元気と生まれつき抜群な運動神経だけで。
 美月みたいに、冷静沈着で、頭が良くて、いつも私の手を引いて導いてくれる……そんなことはできっこない。

 でも、美月にとっては……私はちゃんと光になっていたのかな。

 美月が持ってないところを私は持ってて、私が持ってないところを美月は持ってて。
 それが、私達──双子なんだよね。

 一蓮托生なんて言葉がお似合いの、全てを分け合った大切な妹。

 でも、私達にはそれぞれ魂が宿っていて。それは絶対に確かなことで。
 二人でひとつなのに、『美月』と『結月』っていう、二人の人間で。

 結局──一人だけが残る運命は変えられないんだ。

 ドンッ! ガシャン! ガシャン!!

「……っ」

 突然、耳障りな轟音が体育館内を反響する。

 壁から背中越しに伝わる乱暴な振動。音が発せられた先にある、私達が逃げ込んだ扉。

 感情が暴発したように大きく揺れる扉の向こうから聞こえた、薄気味悪い嗤い声が、私の鼓動を強く打った。

 壊れてしまうのではないかと思えるほど激しく叩かれる扉。一際大きな音が鳴る度、全身から冷や汗が吹き出す。

 体の震えが止まらない。落としたスマホを拾おうと伸ばす指先が、幾度も虚空を舞う。
 鬼が来たんだ。そうだよね、私達がここにいることは知っているんだから……。

 『鬼ごっこ』というゲームを介して手っ取り早く一人を選ぶ。もしそれが目的なら、残された時間に余裕は無い。

 だけど──私達だって、すぐに諦めたくないよ!