泣き疲れて、重い体を起こす気も起きなくて。
 私達は二人寄り添うように、体育館の壁際にもたれかかっていた。

 追いかけていた鬼は気づけばいなくなり、扉を叩く音もない。

 スマホの時計が『0:00』を指す。日が変わったことも、もう美月と私以外残っていないことも──あらゆるものが積み重なり、体にのしかかる。

 でも、そんなの今更で、嫌悪感なんて些細なものでしかなかった。

 スマホのカメラロールで、皆と撮った幾数もの写真や動画を呆然と眺める。

 入学式の日に撮った写真も、クラスの集合写真も、昨年の文化祭も──ただの日常を切り取った一枚一枚も。

 画面の中の皆は、いつも楽しそうに、無邪気に笑ってて。
 あの時間に──ゲームを始める前に帰りたくてしょうがなかった。

 じんわりと熱を持つ目元を堪えながら、私は天を仰ぐ。

 ……私と美月、どちらか一人は失格になる。
 そんなの嫌だ。でも、そうしなくちゃ終われないんだと、『カミサマ』がどこからか囁いている気分だった。

「……私、帰りたいよ。皆のところに」

「……そうね」

 どうしたらいいの……もう、どちらか一人が失格になるしかないの?
 そんなの嫌だ。会うことも出来なくて、思い出を共有して楽しむことも出来ない。そんな未来に……いたくないよ。

「……夜明けまで待ちましょう」

「夜明けって……まだ6時間はあるよ」

「それでも……待つしかないわ。残された道なんてそれしかない」

「……」

「明るくなって、私達が帰らないことに誰か気づいてさえくれれば……」

 ありもしない希望を羅列するなんて、美月らしくない。それほど追い詰められているんだとすぐに理解できた。
 だって……あと6時間、逃げ続けるなんて現実的じゃない。

 私達の体力は限界に近づいている。美月はもう……少しでも走ることすら、無理なはずだ。
 心も体も疲弊しすぎたんだ。私だってもう動きたくもない。