華ちゃんはいつも本を読んでいて、どこか取っ付きにくい。転校してきて以来話したことは両手で数えられる程だ。

「……三人とも、参加するの?」

 不意に、華ちゃんが目線をこちらに向けないまま尋ねた。思いがけない言葉に三人でお互い目を見合わせる。

「どうだろ……どんなものか分からないしなー」

「……参加しない方がいいよ」

「え? それってどういう……」

「……言葉通りの意味」

 華ちゃんはそう言うと、文庫本のページを捲った。

 ゲームのこと知ってるのかな? 都市伝説とかそういうのだったり……だとしても、華ちゃんがそういうの信じるタイプに見えないから意外だ。

 聞き返そうとした寸前でチャイムが鳴り、私は聖歌にワークを借りると断りを入れて自分の席に戻る。
 席が最後列なのをいい事に、朝礼の間、コソコソと課題を書き写していた。


「なあ、皆で『カミサマ鬼ごっこ』ってやつしないか?」

 朝礼が終わり、先生が席を外したタイミングで、クラスメイトの石川智也が全員に向かって言った。

「なんだそれ?」

「ネットで見つけてさ。夜の学校で『カミサマ』と鬼ごっこできる……っていう、都市伝説。勝てばご褒美があるらしいぜ。しかも一応成立するらしい」

「へー。夜の学校って面白そうじゃん」

「いいんじゃね?」

 あっという間に同意する声があちこちから聞こえてくる。夜の学校かあ。クラスの皆で行くなら面白そう!

「……参加するの?」

「え? まあ、うん」

 傍にいた美月から尋ねられ、私はこくりと頷く。美月はあまり乗り気じゃないらしく、険しい表情だ。

「でも先生に怒られちゃうよ?」

「う……それはそうだけど」

 それは嫌かも。課題とか教科書とかよく忘れて、その上成績も大したことなくて、先生たちには散々目をつけられてるのに……やっぱやめとこうかなぁ。