「智也……?」

「いや、放送で……聞いてさ。仲良かっただろ、二人とも」

「……うん」

 頭の中に湧き起こる記憶を一生懸命押し殺しながら、こくりと頷く。

 聖歌の最期を……ちゃんと見届けられなかったけど、けじめは付けてる。
 でも、その場に居合わせなかった智也が、ここにいる誰よりも沈痛な表情をしていた。

「……ごめん。謝って済むことじゃないけど、本当にごめん」

「え、ちょ、智也……?」

「俺が……このゲームに巻き込んじまったんだ。俺が全員を見捨てたようなもんだよ」

 ずきり、と胸が痛む。なんて返せばいいか分からず、沈黙が席巻する。

 智也のせいなんかじゃないよ。だって智也は、皆と楽しもうって考えて……私達を誘ってくれたんでしょ?
 誰だって、このゲームが実在するんだって考えもしなかった。

 誰も……悪くないんだ。

「智也、違うよ」

「羽田……」

「智也は悪くない。全部全部、『カミサマ』が悪いんだよ」

「いや、俺があんなこと言わなきゃ……今頃皆は」

「だからっ、智也が気に病む必要なんて全く無いの。皆……智也のこと、恨んでないよ」

「……」

 皆、きっと同じことを思ってる。智也を悪いだなんて思ってない。
 誰にも……非は無いから。

「だって、誰かを恨むなんてことはしない……それがA組でしょ?」

「……そう、だな」

「だからさ、今は前を向いていこうよ。全員で逃げ切ろう……皆の為にも」

 自然と私の口から笑みが溢れる。智也を元気づけたい、なんて陳腐な理由じゃなくて、心の底から零れた、親愛の笑顔だった。
 誰もお互いを恨まない。誰かが悪いなんて思ってない……なんて、美月の受け売りだけど。

 仮に悪意を向けるとしたら、このゲームの首謀者……『カミサマ』にだ。