『カミサマ鬼ごっこ』と、幼稚園児の殺害事件……正直、関連性があるかは分からないけど、ハッキリ否定できる要素もない。

 あぁーっ……頭痛くなってきちゃった。考え込むのは性に合わないんだよね。身体が勝手に動くタイプだからかな……。

「そう言えば、私が寝ている間、鬼や他の生徒は?」

「いや、見てない」

「見てないね……えっと、今残ってるのは確か……」

「智也と棗……あと、女子が佐倉と湖山、だな」

 私達を入れて、残り七人……思ったよりずっと少ない。

 脳裏を過ぎる、失格になった聖歌達の顔。無力感と後悔が押し寄せ、それを抹殺するようにぎゅっと拳を握りしめる。

 ──その時、教室の外から物音がした。

「!」

 二人もそれに気づいたようで一斉に廊下の方に視線を滑らせる。心臓が早鐘を打ち初め、嫌な汗が吹き出す。

 このまま鬼に見つかったら、逃げる先は外しかない。ここが一階で良かったと誰ともなく感謝しつつ、物音の主を確認すべくそっと窓際に近寄る。

 窓を閉め切ったまま、薄暗い廊下に目を凝らす。
 ……廊下の端に、ふわふわと人魂のような光が浮いて見えた。

 ぞく、と今までとはまた違った恐怖がざわめく。

 も、もしかして幽霊……!?

「み、みみみ美月っ」

「何よ、どうしたの?」

「あ、あれあれ……!」

 大袈裟なほど震える指先で廊下を指し示すと、美月は怪訝そうに窓際に頬を押し当て、指さす方を見つめる。

 ゆ、幽霊だったらどうしよう……だってここ、夜の学校だもん……今まで頭が追いつかないくらい色々あったせいで、そんな怖さなんて忘れてたよ……!

 人知れず全身に力が入る。ゆらゆらと規則的に揺れる光の玉が、少しずつ大きくなっているように見えた。

 近づいてきてるの……!?

「……ああ、なるほど」

 美月は小さく呟くと、反対側の廊下の方を確認して、教室の扉まで歩み寄る。
 そして、ゆっくりと扉を開けて──顔をひょっこりと出した。

「え、ちょっと……!」

「いいから」

 頭が出るくらいの隙間から身を乗り出した美月は、焦りを見せる私達を他所に光の玉の方をじっと見ていた。

 恐怖のあまり、私はささっと教室の隅っこに駆け寄り、体を精一杯縮こませる。
 って……幽霊だって怖がってるの私だけなの!?