「……なあ、事件のあった場所って、前畑がこっちに来る前にいた所じゃなかったか?」

 思い出したように顔を上げる飛翔。

 華ちゃんが転校して来たのは今年の一月。冬休みが明けて、三学期が始まった時だ。
 確かに先生は、華ちゃんは隣の県から来た、って言ってたっけ。

「……そうだわ。確か前畑さんが転校して来る直前に被害が収まっているのよ」

「え……」

 ぞわ、と背筋が凍る。それって……華ちゃんが連続誘拐犯ってこと?

 与太話にしても質が悪い、現実味のない考えに私は首を振る。
 到底考えられないし、私達まだ中学生だよ。子どもを誘拐して、あまつさえ殺すなんて……できっこない。

「偶然じゃないの?」

「……前畑さんだけ、『カミサマ』の放送がされるよりも前に連れ去られているわ」

 確かに、変だ。『カミサマ』の放送は華ちゃんが消えた後、唐突に始まった。

 それに、あの時の華ちゃんはまるで子どもを……鬼を受け入れるみたいに、自ら近寄って行ったような……。

 そう言えば、華ちゃんは聖歌や私達に、ゲームへの参加をやめるように言ってた!

「華ちゃん言ってた。『ゲームに参加しない方がいい』って……」

「は……前畑はゲームについて何か知ってたったってことか?」

「さあ……でも、私達よりも色々知ってるはず。じゃなきゃあんなこと言わないよ」

「って言っても、前畑に会う手段なんて無いからな……」

「それはそうだけど……」

 会話はそこで途切れる。どうしようもなく手詰まりだった。
 華ちゃん──私達と少し距離を取っているように思えて、どこか取っ付きにくさがあった。

 それでも、困っているとそっと手を差し伸べてくれるような、優しい一面だって幾度となく見た。華ちゃんは首謀者じゃないって本能が訴えてる。

 でも……どこか疑わしいところがあるのも事実で。