美月が自分のスマホをポケットから取り出し、画面を見せる。
 お題は美月の指に隠れて見えなかったけど、送り主は『遘√?谿コ縺輔l縺』と記されていて、明らかに名前が違う。

 まさか、お題を送っている人物は二人?

「だからなのね。聖歌が……ああなったのは」

 美月が顔を曇らせる。二人の送り主……それぞれで失格者の処分が異なる。
 一方は突然消えてしまい、一方は惨殺──。

 その仮説が正しいなら、私もお題違反をすれば……同じようになるってこと?

「……結月、あなたのお題はな──」

「す、ストップ」

 美月が言いかけた口を私は手で塞ぐ。
 私のお題は『秘匿』……でも、そもそも何を隠せばいいのか分からない……だから、何も言えない。

「お題は、その……えっと」

 ごにょごにょと口ごもり、どうにか誤魔化せないかと頭をフル回転させる。でも切り抜けるアイデアなんて思いつくはずもなくて、焦りばかりが加速する。
 それを察したのか、美月は妙に落ち着いたように私の手を取り払う。

「言えないのね」

「……ん」

「……何があっても、お題だけは絶対に守りなさいよ」

「分かってる。大丈夫だよ」

 懇願するように、美月は私の手をぎゅっと握る。私もそれに応えようと、力強く頷く。
 その事を飛翔達にも共有しようと、私達はお互いを安心させるように手を繋ぎながら二人の元へ戻る。

 けれど、それよりも前に、耳を劈くような怒号が響いた。

「ねぇっ、結月達は!? どこにいるの!」

「おい落ち着けって……!」

「二人を置いて来たの!? 酷い! はやく、早く見つけないと……!」

「違う、二人とも無事だ! 頼むから大人しく休んでくれ!」

「嫌よ! 二人に会わせて!」

 我を忘れたように、半狂乱になった愛音が、飛翔に掴みかかっていた。

 遠目からでも分かるほど、愛音の表情には焦燥と恐怖が滲み、今にも飛翔を振り切ってしまいそうな勢いで……パニックを起こしてるのだとすぐに分かった。