『カミサマ』の言葉が頭にこびり付いて離れなくて、私達の間にはどこか距離が感じられた。

 それでも、このまま進み続けるしかなくて、『カミサマ』が居るかもしれない放送室へ向かうことになった。
 放送室は、2年A組の教室がある校舎とは真反対の校舎──一番校門から近い棟にあるので、鬼を警戒しつつ移動する。

「……ランプがついてる」

 愛音の言葉通り、壁に埋め込まれた『放送中』のランプは、奇妙なほど爛々と赤く輝いていた。
 ランプがついてるってことは……中に誰かいる。多分、それが『カミサマ』だ。

「俺が開けるよ。三人は下がってて」

 扉の前に着くと、飛翔が私たちを制するように前へ出る。恐る恐るといった様子で、ゆっくりと放送室のレバーに手をかけた。

 私はごくりと息を飲む。もし、この扉が開いたら──一縷の望みを乗せるように、飛翔が勢いよく力を込める。

 けど、レバーはビクともせず、ガッと鈍い音だけが鳴るだけだった。
 鍵がかかってるんだ……。

「開かないわね……」

「どうする? 突き破ろうと思えば出来ないことはないと思うけど」

 飛翔は少し声音を揺らし、振り返りながら尋ねる。

「んー、消化器とか使う?」

「や……危ないんじゃない?」

「そうね。音で鬼を呼び寄せてしまうかもしれないし」

「それもそっか……諦めるしかないのかな」

 愛音が悔しそうに零す。『カミサマ』さえどうにかなれば、このゲーム自体を終わらせられるかもしれない……そんな意味が暗に秘められていた。

「放送室に誰かいる、って分かったことは収穫だね」

「そうだな。取り敢えず、陽介達の所まで戻るか」

 分かってはいたけど、落胆は避けられない。もし『カミサマ』をどうにかできれば、何か変わったかもしれないから……。