『ザザ……』

 スピーカーから、ノイズ音が流れた。
 外していた目線を即座にスピーカーに戻す。スピーカーからは暫くノイズ音が続き、そして、声がした。

『彼らには今後──として役割を果たしてもらいます』

 はっきりとした返答。けど、肝心な部分が、強いノイズに覆い隠されて聞こえない。

「何? 私たちに何の役割があるって言うの?」

『彼……ザザッ……にとしてのやくわ……ザザザッ』

 ノイズが酷い。まるで、誰かに妨害されているみたいだ。
 でもこれは……どうしてか、『カミサマ』のせいじゃない気がした。

「お願い、これだけは答えて……このゲームは、一体いつになったら終わるの?」

 今の『カミサマ』なら答えてくれるかもしれない。そんな、確証のない、希望にも近い問いを口にする。

 僅かな間が、一生のように長く感じられた。
 依然としてノイズ混じりの放送は、途切れる寸前に私たちに告げた。

『──最後の、一人になるまで』

 ぷつり、とノイズ音が止む。直後に残ったのは、残酷なほど静かな一時だった。

 今、なんて言った……? ゲームが終わるのは、最後の一人になるまで……?

「……冗談だろ」

「ねぇ、そんなのって……」

 絶望に染め上がった飛翔の一言。愛音がその場に崩れ落ち、唖然とした声が空虚を揺蕩う。

 静寂に支配された教室は、噛み合わなくなった歯車のように、歪に動かない。
 このゲームで勝ち残れるのは、一人だけ……。

 そんなの嘘だよね? だって私達……A組は、ずっとこのクラスのまま卒業しようねって、いっぱい語り合った仲間なんだよ。

 このゲームのせいで……全部壊れちゃうの?

「……誰が残っても、恨みっこなしよ」

 ふと、美月が小さく零す。持っていた茉美のスマホを一度胸の前で握りしめ、ポケットの中へ仕舞い込んだ。

「ここにいるのも得策じゃない。いっそ、放送室に行ってみましょう」

 気を紛らわすように提案した美月。重苦しい空気の中、私たちは互いの顔を見合わせ、静かに頷くことしか出来なかった。