「結月、学校遅れるわよ」

「ちょっとだけ待って!」

 特有の熱気を感じる初夏の朝。私、羽田結月は、双子の妹の美月に急かされながら朝食を口いっぱいに詰め込んでいた。

『……あの凄惨な事件から半年。未だ犯人は見つからず、警察は──』

 テレビの音声をほどほどに聞きつつ、ジュースを飲み干し、速攻で歯磨きをして、玄関で待つ美月の元に駆け寄る。

「ごめんっ、お待たせ!」

「遅い」

「ごめんって。お母さん、行ってきまーす」

 キッチンにいる母に聞こえるよう大きな声を出して、私たちは学校への道を歩き始める。

「中学2年生になってもまだ寝坊?」

「すぐ起きれる美月の方がおかしいんですー」

「はいはい」

 妹の美月は、お転婆な私と違ってクール……いや大人だ。一卵性で顔立ちは殆ど同じなのに不思議で堪らない。

 美月は運動が苦手だけど、とんでもなく頭がいい。私は運動は大の得意で成績は下の上。まさに一蓮托生の双子なんだな、とつくづく思う。

 学校へ到着して教室に入れば、口々にみんなから「おはよう」と声をかけられる。

 皐月中学校2年A組。地元の公立校で、田舎だから生徒数が少なくて、クラス全員が仲良し。このクラスのまま卒業したいって隙あらば言ってるんだよね。

 ……そういえば私、昨日国語の先生に出された課題、やってないっけ。

「聖歌お願いっ! 課題見せて!」

 私は鞄を自分の席に下ろし、すぐさま親友──小野聖歌の席まで駆け寄って泣きつく。聖歌は「また忘れちゃったの?」とくすくすと笑う。