けれど、「恐らく、お題違反よ」と美月が割って入った。
 美月は床に落ちていた、電源がつきっぱなしのスマホを手に取る。

「……茉美のスマホよ」

「え、それじゃ……お題が分かるの?」

「ええ。茉美のお題は"不笑"ね」

 スマホのショートメッセージをこちらに向ける。そこには、文字化けした差出人からのメッセージ──"不笑"の二文字が記されていた。

「文字通り解釈するなら……笑ってはいけない、ってところかしら」

「じゃあ、古川は笑ったってことか……? この、状況で?」

「私もよく覚えていないけど、逃げ切ったことに安心して笑った……ように見えたわ」

 影を落とした美月の声に、誰も何も言えなかった。

 そんなの……理不尽だよ。こんな、どうしようもない現実を、少しでも笑い飛ばしてしまうことすらさせてくれないの?
 ほんの僅かな安心感だって許されないの?

 私達が、失格になった皆が、何をしたって言うの?

「……ねぇ、カミサマ。聞こえてるでしょ、私の声」

「結月、何を……」

 胡乱な気持ちを吐き出したくて、美月を無視して教室のスピーカーに目を向ける。
 絶対届いてる。だって……A組にいた時、私たちは『カミサマ』と会話出来ていたんだから。

「一体何がしたいの……? 茉美を……皆を返して!」

 私の小さな叫びに、スピーカーからは返事は無い。
 どうして……返事をしないの?

 ああ、『カミサマ』にとって、ゲームの参加者は、ただ捕まるだけの存在でしかない……気持ちなんてどうでもいいんだ。

 そんな、腑に落ちない答えを飲み込もうとした瞬間。