ぽつりと飛翔が呟く。皆もそう思っていたのか、その一言でどっと緊張が解け、全員の口元が緩んだ。

「なんだー、やっぱりガセネタかよ」

「所詮は都市伝説ね」

「まあいいや。んじゃ学校探検でもするか!」

 もしかしたらなにかあるかも、なんてちょっと妄想してたけど、そりゃないよね。

「美月、私達も学校探検に参加し……」

 絶対乗り気にならないであろう美月を誘おうと、隣に視線を走らせた。
 ──その瞬間。

『ザザ……』

 深夜のテレビみたいな耳障りなノイズ音が、静かに鳴った。

 何、今の……もしかしてスピーカーから?

 一瞬で静まり返った教室で、皆の目線は、例外なくスピーカーに釘付けになっていた。

 重苦しい空気の中、私たちは時が止まったように声を失う。気のせいじゃないかって、どこかでそう思ってて。

 けれど、隣にいる美月が、沈黙を破った。

「ねぇ、何か聞こえない?」

「な、何かって、何?」

「……外からよ」

 美月の言葉に、私は視線を薄暗い廊下へ滑らせた。耳をすませると、確かに何かの物音が聞こえる。

 もしかして先生? 課題を取りに来たにしては長すぎちゃったのかな? 10時までに返せばいいって言ってたのに。

 でも、何かおかしい……規則的に聞こえる音。少しずつ近くなってきて……それに、これ。

 タッタッタッ……タッ。

「足音、だよね……?」

 誰かが走る音……でも先生じゃない。まるで小さな子どもが裸足で走り回ってるみたいな……乾いた音だった。

 足音はすぐ傍にある扉の前で止まった気がした。磨りガラスの下側に、少しだけ影が見える。

 誰かいる……まさか、『カミサマ』?

「やだ、何……?」

 誰かの悲鳴にも似た声。震えた声音に、胸の辺りが不快感を伴ってざわめいた。

 不意にゆらりと人影が動く。頭しか見えていないのが分かってしまった。

 どくっ、と心臓が大きく脈打つ。誰かいる。誰かいる。背が低いから先生じゃない。一体、誰が──

 ──ガラッ。

 開け放たれた教室の扉。びくりと肩を震わせ、私は思わずぎゅっと目を閉じる。

「……子ども?」

 誰かの呟きに、私は恐る恐る瞼を開ける。