ただ、狂おしいほどに憎かった。

 人間の暗く染まった闇を知らず、ただ無邪気に笑う姿が。

 知り尽くした私は苦しんでいるのに、何も知らないだけの彼らが幸せなの?

『──は私のモノなの』

『色目使いやがってこのアバズレが!』

『目障りなんだけど。死んで』

 彼女の嬌声と共に増えていく身体の傷は癒えない。蹴られ、殴られ、罵倒される日々は当たり前。

 教師は私が平気な顔をしているのを見て安堵し、唯一の親友とは彼女の手によって引き離されてしまった。

 孤独な私を侵食するのは、彼らへの憎悪。

『ねぇねぇ、お菓子食べる?』

『食べる!』

 甘美な誘い文句を唱えれば、彼らはひょこひょこと私についてきた。
 甘く幸せに満ちたモノなんて何処にもありはしないのに。

『やだ! さやちゃん! さやちゃん!!』

『さやちゃんおきて! おきてよぉ!!』

『かみさま……たすけてぇ!!』

 ──『神様』なんて、いるはずがないんだよ。

 もしいたとしても、私がこの手で握り潰してあげる。
 ささやかな幸せひとつ、願うことすら赦されない世界を与えた『神様』なんて、私には要らない。

 ──縋りついたところで、救ってくれなかったでしょう?