先生×秘密 〜season2

卒業式が終わった午後の校庭は、花束と笑顔であふれていた。
最後の思い出を残そうと、生徒たちは三々五々に集まり、写真を撮り合っている。

その輪の中心にいたのは、角谷だった。

「先生〜!一緒に撮ってください!」

「泣きすぎ〜!」

「顔グシャグシャですよー!」

花束をいくつも抱えて、ぐしゃぐしゃの顔で、それでも一人ひとりに向き合ってシャッターを切る。
その姿に、職員室の窓際から何人かの教師が目を細めていた。

「さすが角谷先生、人気者〜」

その声に、コメも微笑んだ。

スマホを取り出し、そっと窓の外にレンズを向ける。

シャッター音が鳴ると同時に、
「あ、コメ先生、角谷先生を撮りました?」
と、隣から茶化す声。

振り返ると、にやりと笑うのは国語の白石先生。

「あとで、送ってあげようと思いましてね」

そう返して、コメは席に戻ろうと歩き出した。

ふと、すれ違うとき。
渡部の席の上に、見覚えのあるものがあった。

……革ひもに、金属プレート。

キーホルダー。

「あっ……」

思わず足を止め、じっとそれを見つめてしまう。

(まさか、同じものを、今も)

6年前の教室、修学旅行、そしてあの日の屋上。
いろんな記憶が、一気によみがえってくる。

背後から静かに近づいた気配。

そして、低く、懐かしい声。

「……屋上、行くか」

耳元でそう言われた瞬間、コメは目を見開いた。

渡部だった。

(あのときと、同じ……)

返事はなかった。
でも、気づけば体が動いていた。

職員室を出ると、春の風がふわりと吹き抜ける。
それに背中を押されるように、コメは足早に渡部の背中を追いかけた。

渡部も、コメも、もう迷わなかった。

階段をのぼるたびに、高鳴る鼓動。
開かれる扉の向こうに、6年分の想いが待っている気がして――