先生×秘密 〜season2


「メリークリスマス、ですね〜」

「……部屋着で乾杯するやつ、初めて見た」

「失礼な!これは“ルーム・パーティ・スタイル”って言うんですよ」

鼻を鳴らして、コメはこたつにずるずるともぐっていく。
髪をほどいて、いつものきれいな白衣のイメージとは少し違う、リラックスした横顔。

部屋のテーブルには、コンビニの小さなケーキとスパークリングワイン。
飾らないけど、角谷と過ごすあたたかい夜だった。

「はいはい、乾杯しますよー。ちゃんと目、見てくださいよ、コメ先生」

「はいはい」

グラスが軽く合わさる。小さな、乾いた音。

ソファに腰を下ろした角谷の横で、コメはごろんとこたつに寝転んだ。

「……ふわぁ……あったかい……。こたつから出たら負けですね」

「……じゃあ、年明けまで寝てな」

「ありかも……」

冗談みたいに言って、コメは首元のネックレスに手を伸ばした。
そっとはずして、小物入れに手伸ばす。

シャリンっと音を立てたそのほんの一瞬。

角谷の視線に、ちらりとあるものが映った。

それは、小物入れに一緒に入っている小さなキーホルダー。

革ひもに金属のプレートがついた、飾り気のないデザイン。

(……ん?)

どこかで見たような気がして、角谷はほんの一瞬だけ視線を止めた。
けれど、深く考えることはしなかった。

「雑だなしまい方だな。せっかくあげたんだから、大切に扱ってください!」

「丁寧に大切に扱ってますよー!!」

「口ではそう言ってるけど、勢いで投げ入れてたよね?」

「そんなことなーい」

笑いながらコメは目を閉じ、そのままこたつに沈み込んでいく。

角谷は小さく笑って、手元のグラスをもう一口あおいだ。

……なんだったっけ、あのキーホルダー。

ほんのかすかな、デジャヴみたいな感覚が胸の中に残ったけど、すぐに流れていった。

暖房の音が小さく響く部屋で、ふたりの間に流れる時間だけが、穏やかに静かだった。