「君にだけは、任せたいんだ」
そう依頼してきたのは、表向きは芸能事務所の幹部、裏では情報組織の元幹部だった男。
対象は、いま若手でトップに近い人気を誇るアイドルグループのセンター――咲良(さくら)。
…どうやら最近、“ライブ中に事故に見せかけた襲撃”が相次いでるらしい。
ユウト「なんで俺がアイドルのSPなんだ」
元幹部「本気で来るやつを止められるのはお前だけだ」
ユウト「……俺、ファンじゃないよ?」
元幹部「知ってる。でもアイドルが守られるべきなのは、ファンだからじゃない。希望だからだ」
(※珍しくちょっと良いこと言った)
【リハーサル会場】
咲良「…あなたがユウトさん?」
ユウト「うん。君の影にいるだけだから、気にしなくていい」
咲良「……気にしないとか無理でしょ。え、めちゃくちゃ顔整ってるし」
ユウト「仕事中に褒めると照れるからやめて」
(※意外と照れる)
【ライブ当日】
咲良がセンターで立つステージ、
客席の中に、明らかに違和感のある人物――
ユウト(……来た)
観客の波にまぎれて、銃を組み立てようとしてる男。
普通のSPなら気づけなかった。
次の瞬間、
ステージの照明が落ちる――と同時に、
ユウトの姿が消える。
暗闇の中、
「カチ…」という乾いた音が響いたと思ったら、
照明が戻ったとき、
犯人はすでに舞台裏で気絶して転がっていた。
あとで映像を確認したスタッフが言った。
「…人が、瞬間移動でもしたのかと」
「なにこれ、CGじゃないの…?」
咲良だけは知っていた。
あのとき、自分のすぐそばを通り抜けた黒い影と、風の匂いを。
ライブ終了後。
咲良「ねえ、私を守ってくれてありがと」
ユウト「仕事だから」
咲良「でも、あなたがいたから、私、歌えたよ」
ユウト「……ならよかった」
(照れ隠しでコーヒーを一気に飲む)
後日。
ネットで話題になった。
「センターの後ろにいた黒スーツの男がかっこよすぎる件」
「アイドルSPのほうが推せる」
「動きがプロってレベルじゃねぇ」
ユウト(…バズらなくていい)


