ダメだ。もう忘れないと。


もう…過去の事なんだから。


私はこれ以上過去の事を思い出さないよう
うつ向きながらゆっくりと深呼吸をし、


握られている手にゆっくりと力を込めた。



「私…、私は…、高坂君の事、」



言葉を詰まらせながらも気持ちを言おうと
高坂君の手に力を込める。


"好き"


でもいざとなれば
そのたった2文字の言葉が出てこない。

早く言わないと、高坂君も不安になる。

そう思っていると、握られた手を更に包みこむように、高坂君のもう片方の手が私の手に重なるのが分かった。