【改訂版】満月の誘惑




一週間後、旦那様のご両親と初対面。


顔合わせの時は、夫婦揃って出られなかったことを謝られたけど、式には来てくださったのだから、このようなおめでたい席で責めるなんてことは、誰もしなかった。



私は白無垢を着て、旦那様は袴を着られて、月城家の廊下を歩く。


白無垢って重たくて、少し気を抜くと体のバランスを崩してしまいそうになる。



旦那様は動きやすそうで良いな。


私もいつもの着物で良かったのに。こんな豪華な式、挙げない人は滅多にいないらしいけど、顔合わせをしたのだから、形に拘らなくても夫婦になれる。


時々小さくため息を吐いて、白無垢の重さを逃す。



客間の仕切りを全て取り払った、大広間の上座に座ると、次々と膳に乗った料理が運ばれてきて、お神酒(みき)も私たちの間に置かれた。



「お酒、飲んだことない…」



盃も置かれると、顔合わせの時に引っ張りだこで居なかった仲人さんが、その盃にお酒を注ぎ、旦那様に渡された。


表情を一つも変えず、見たところ本当に飲んでいる。お酒飲めるんだ。すごいな。



「柚葉ちゃん、どうぞ」


「ありがとう、ございます…」



飲まなきゃいけないのかな。

盃を近づけただけで、独特なツンとした香りがして、なかなか口にまで運べない。