【改訂版】満月の誘惑





薪を焚べて火を起こして、お湯を沸かして。


薪が燃える火を見つめながら、荘司さんのために私は何ができるだろうと考える。


無理やり引き出そうとは思わない。でも、まだ私には話すほどの信頼がないと突きつけられているようで、それは苦しい。



待っていると決めたのに、何かしてあげたい。




「でもね柚葉。待つって、思ってるより大変なことよ。私も、お父さんと結婚してから、いろいろと長い道のりだったんだから」


「え、初耳です。その話、聞きたい」


「柚葉と同じようなものよ。結婚する前からお父さん、ずっと隠し事をしているのは分かってたんだけど、言わなかったから聞けなかったの」




探ろうとしたけどボロを出さず、聞こうとしたけどはぐらかされ。


結局お母様が問い詰めることになり、ようやく口にしたのは、〝一度離婚を経験しており、前妻との間に息子が一人居る〟というものだった。




「もっと重大なことだと思ってたから、聞いた時笑っちゃった」




荘司さんも、笑える隠し事だと良いわね。


そう言われて、〝そうだね〟と笑って返したけど、荘司さんの隠し事を軽くは見れない。もっと重大な事のような気がする。



気がするだけで確信はないけど、これが女の勘というやつだと妙に納得できる。



荘司さんを受け入れる覚悟はできているけど、どんな言葉が飛んでくるのかを想像すると、ほんの少し恐怖はある。




「柚葉、荘司さん呼んできてくれる?」


「はい」