小上がりに立っていたから、荘司さんと同じ目線だったけど、私が下に降りると荘司さんを見上げるほど身長差がある。
「柚葉?」
聞いてもないのに勝手に想像して悲しくなって、荘司さんの目を見れなかった。
「…あ、ごめんなさい。時間がないですね。急がれた方が、」
自分の足元を見てモジモジしていると、柔らかく荘司さんに包まれた。
あ、懐かしい。あの時の温かさと同じ安心感。今回はその安心感とはまた別に、少し心臓がうるさく、顔が熱く感じる。
この間より、体も密着しているせいだろうか。
「やっぱり…、どこに行かれるのか、何をしに行くのか、聞きたいです。心配です…」
遠慮がちに荘司さんの襟元を掴んでみる。甘えるわけじゃないけど、私の気持ちが届いて欲しくて。
荘司さんは私を抱きしめる力を強めると、私の首元に顔を埋めた。
「今回は言えない。でもいつか言うから…。必ず、柚葉には言えるようにするから。すまない」
私は首を左右に強く振り、荘司さんから離れるように軽く胸を押した。
「私は、ずっとここに居ます。いつでも大丈夫です。話したくなるまで、待ちますから」
「…ありがとう。では、そろそろ行く」
「いってらっしゃいませ」
荘司さんが私の首元に顔を向けた時、くすぐったかったけど、胸が強く締め付けられた。
別の家で子作りしているなんて、見えない不安も吹き飛んで、荘司さんの言葉を信じて待っていようと決めた。



