【改訂版】満月の誘惑




玄米を食べて味噌汁を口にされた時、眉がピクっと上に大きく動いた。美味しくなかったかな…。




「もう一度聞くが、今日のご飯は柚葉が作ってくれたんだったな」


「はい、そうです。やはり、お口に合いませんでしたよね。ご期待に添えず、すみません…」




ぶっきらぼうな口調だったから、てっきり美味しくないんだと思って、謝罪の言葉が口をついて出た。


私には嫁は務まらなかったか。それが頭に浮かんで凹んでいると、



「いや、逆だ。お母さんのご飯も美味しいが、柚葉のご飯は何かが違う。とても美味しい。どう言えば良いか…」



とモゴモゴ言い出した。


こんなによく話す荘司さんを、初めて見た気がする。

そして、私の作ったご飯をとても美味しいと言ってくれたのが一番嬉しい。



荘司さんの声が、私の頭の中で何度も同じ言葉を繰り返す。


〝とても美味しい〟


この上なく喜ばしい褒め言葉。




「そうだな…。甘いわけではないが、味に甘味がある…。あ、旨味か。これが旨味なのかもしれん。なぁ、柚葉。…柚葉?何を笑っているんだ」


「あ、ごめんなさい。お褒めの言葉、嬉しいです」




一人で答えを出そうとしている姿が面白くて、思わず笑って見ていた。


こんな顔、するんだ。こんなこと言ってくれるんだ。そう考えていたら、荘司さんが可愛らしかった。