【改訂版】満月の誘惑





囲炉裏のまわり四方に置かれたご飯を見て、私の着物の袂を引っ張るお母様。


そういえば、そう言われていたような。




「何故です?皆で食べた方が美味しいのに」


「夜くらいは、二人だけで話すのよ。そうやって仲を深めていかないと。荘司さん、ごめんなさい。あなたと柚葉のご飯は離れに運ぶから、そちらへ行ってくださるかしら?」


「あぁ、もちろんです」




荘司さんも、少しは躊躇う素振りを見せたらどうでしょう。

わざわざ二人にしてもらわなくても、寝る時は同じ部屋なんだし、そこでお話しはできる。



とはいえ、お母様に断りをいれても聞かないふりをされて、強引に離れにご飯を置かれると、ピシャッと扉を閉められてしまったので、仕方ない。




「…頂きましょうか」


「今日のご飯は、柚葉が作ってくれたんだな」


「そうです。お口に合うか分かりませんが」


「いただきます」





荘司さんが箸を取って、ご飯を口に運んだのを確認してから、私も箸を取った。


私が作ったご飯を食べるのは、今日が初めて。



料理の腕に自信がないわけではないけど、お母様のご飯はとても美味しいから、お母様の腕前に敵うかどうか。


反応が気になってご飯を口に運べず、横目で荘司さんのお顔を伺う。