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月城家は、母屋とは別に一回り小さな離れがある。
普段は客間として使っていたけど、その家を荘司さんと私の家として、もらえた。
「今日から離れで暮らしたら良いわ。必要なものは、徐々に持っていったら良いじゃない」
「でも荘司さんに、一人でゆっくり休んでもらいたいから…」
「俺は柚葉さんと二人でも、問題ないですよ」
「ほら。荘司さんもそう言ってるじゃない」
荘司さん、お母様と結託してるみたいに、息ぴったり。
式の時は〝柚葉〟と言ってきたのに、お母様の前になると〝柚葉さん〟なんて、畏(かしこ)まっちゃって。
まあ、お母様の前でさん付けなのは、当然か。
「はい…。では、そうします」
「よろしい」
お母様に満面の笑みで見送られて、荘司さんと二人で離れに足を踏み入れた。
「荘司さん、お疲れではないですか?」
「うん。少し疲れたが、大丈夫だ。柚葉も疲れただろう」
「少し疲れました。白無垢がとにかく重たくて…」
一服してもらおうと、温かいお茶を淹れて出した。
お茶から出る湯気が心地良く感じるようになってきた、秋夜の寒さ。
お茶を啜る荘司さんに続いて、私も口を付けた。
温かい…、沁みる。
湯上がりのお茶を、先ほどもらったところだけど、外を歩くと少しの時間でも体が冷える。
手を温めるだけでもしてほしくて出すと、飲んでくれた。



