私たちの家の二軒隣には、温泉がある。
お店としてはやっていないけど、時々貸してもらって入ることがある。
自分たちで作る五右衛門風呂も気持ち良いけど、誰かに入れてもらって入るお湯は、格別。
今日は式のために、私も荘司さんも髪の毛を固めていたから、それを解放させるためと、疲れた体を癒すためというわけか。
お父様に肩を組まれて、前を歩く荘司さん。
体格は男の人にしては細めだけど、背は高い。後ろ姿さえも美しい。
「柚葉。今日は荘司さんと、いろいろお話できたみたいね。新しく知れたことも多いんじゃない?」
「…うん。あんなに笑う人だと思わなかった。顔合わせの時は無表情で、考えが読めなかったけど、今日は別人な気がしたの」
「荘司さんと、仲良く暮らせそう?」
「…だと良いな」
「柚葉なら大丈夫よ」
二軒隣に行く道中も、温泉から上がって家まで帰る時も、お父様は荘司さんを離さなかった。
お父様が荘司さんと結婚したみたい。
何も言わなかったお母様も、帰りはさすがに怒っていた。
「荘司くん、荘司くんって。何よあれ!今日の夜はお説教よ!」
そんなみんなの様子を遠くから、微笑ましく見守る私。
そして荘司さんの後ろ姿を見て、勝手に頬が赤らんだ。
と言うのも、温泉から先に上がっていた荘司さんたちは、お茶をご馳走になっていたようで、ようやくホッとできたなとリラックスした状態で私たちも上がったところ、縁側で湯上がりのお茶を飲む荘司さんを見て、足が止まったのだ。



