「柚葉ちゃん、荘司のこと、どうかお願いね」
「はい、お義母様。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「いろいろ迷惑かけると思うけど…」
「そんな迷惑だなんて!」
結婚式も穏やかに終わり、月城家の客間に泊まっていくように勧めたのに、なぜか強く断ってきて、荘司さんのご両親はその日に帰ってしまった。
荘司さんの婿入りの最後の夜なのに。
「可愛い孫、楽しみにしてるわ」
帰る前にお義母様に耳打ちされて、恥ずかしすぎて荘司さんを見れなかった。
でも多分、何を私に話したか、荘司さんは分かってる。
隣に立っていた荘司さんが私に一歩近づいて、手が私の腰に何度か触れたから。
「お気をつけて…」
孫、か。
荘司さんとの子ども。
欲しくないわけじゃないけど、今はまだどういう気持ちで考えたら良いか分からない。
「よし、じゃあ荘司くん。今日は温泉でも入りに行こうか」
「温泉、ですか?」
「ゆっくり浸かって、男同士語り合おうじゃないか」
子どものことをぐるぐると考えていたら、お父様が威勢よく声を上げた。
温泉か。家族で行くのは、久しぶりだな。



