湊斗の声は、普段のクールな彼からは想像できないほど熱を帯びていた。
「うん? なに?」
「しずくのその力は、将来パティシエとして働くうえで、きっと誰にも負けない、ものすごい武器になると思うんだ」
湊斗は、じっと私の目を見つめ返した。
「小麦粉とか重い材料の運搬も、大きな生地を一度にこねる力も、しずくのその怪力があれば、どんな大変なことも乗り越えられる」
湊斗の言葉に、私の心は温かくなった。
まさか、自分の力がこんなふうに認められるなんて。
「それから、繊細なデコレーションをあっという間に仕上げる、その高速で正確な手作業もだ。 お前の力は、お菓子作りの可能性を広げてくれるはずだから」
湊斗は、優しい笑顔を見せた。
彼の言葉は、私が今まで人には言えない秘密だと抱え込んできた力について、全てを受け入れてくれていた。
湊斗の声は、私の心を温かく包み込み、じんわりと深い安堵が広がった。
「あのマラソン大会で、とっさに人を助けたしずくの勇気は、お菓子作りで人を笑顔にするパティシエにとって、何よりも大切な資質だと俺は思う」
湊斗は私の力の全てを認め、その根底にある行動の真意まで見抜いてくれていたのだ。
彼の言葉を聞くたび、私の心の奥底にあった不安の塊が、少しずつ溶けていくのを感じる。
パティシエには、そんな人を思いやる心や勇気も必要なのだと、湊斗の言葉が深く胸に響く。
そして、湊斗はまっすぐな瞳で私を見つめ、静かに、だけど力強く提案した。



