最強パティシエは、幼なじみに恋をする



湊斗は、何でもないことのように、短い言葉で私に尋ねた。


「えっ、でも……湊斗に悪いよ」

「いや、全然悪くない。だって俺ら、幼なじみだろ? 家だって近所だし」


湊斗の声は、豪雨の雨音にかき消されそうになるくらいに優しかった。


「ほら、入れよ」


湊斗が傾けた傘から、溜まっていた雨粒が一斉に落ちる。


「でも……いいの?」


私がモジモジすると、彼が真剣な目で言う。


「ああ。それに、俺がお前のことを放っておけねえから」


私の肩に、湊斗の大きな手が触れた。


その指先から伝わる温かさに、胸がドキリと高鳴る。


放っておけないって、そんなふうに言われたら……。


「それじゃあ、お言葉に甘えて……」


湊斗の厚意に甘えることにした私は、彼の差し出す傘の下にそっと身を寄せた。


傘の骨組みが、二人の間に少しだけぶつかる。


「それじゃあ、行くか」


私と湊斗はひとつの傘のなかで、肩を寄せ合うようにして歩きだす。