最強パティシエは、幼なじみに恋をする



ある日のサッカー部の練習終わり。


この日は、鉛色の雲が空を覆い、冷たい風が一段と厳しくなっていた。


湊斗が、グラウンドのベンチで疲れたように休んでいるのが見えた。


「湊斗くん、お疲れ様!」


七海が弾んだ声で呼びかけると、湊斗は顔を上げて、私たちのほうを見る。


七海の手に持たれた水筒に気づくと、彼は少しだけ目を見開く。


「これ、しずくが淹れてくれたココアだよ! 温かいから、どうぞ」


七海が笑顔で水筒を湊斗に差し出す。湊斗は私を見つめて、静かにそれを受け取った。


「……ありがとうな、しずく」

「ううん」


彼のシンプルな言葉が、私の胸にそっと広がる。湊斗はココアを一口飲むと、フゥと白い息を吐いた。


「……体が温まるな」


その言葉に、胸の奥がふわりと軽くなるのを感じた。


ココアを持ってきて、本当に良かったな。


そんなことを思っていると、湊斗がベンチの端に置いていた自分のマフラーを手に取った。


濃いグレーの、シンプルなマフラーだ。


それを手に湊斗がこちらへと近づいてきて……。


え?


湊斗は何の躊躇もなく、私の首にマフラーをくるっと巻きつけた。


「み、湊斗!?」