最強パティシエは、幼なじみに恋をする



翌日。学校からの帰り道。


七海と別れ、私は分厚い灰色の雲の下を歩いていた。


──ゴロゴロゴロ!


遠くで、雷の音が聞こえた……と思ったら。


──ぽつり。


「え?」


空から落ちてきた水滴が、頬に当たって弾ける。


最初はポツポツだったのが、あっという間に数を増していく。


「うわあ。雨、降ってきちゃった!」


傘を持っていない私は、慌てて近くにあった喫茶店の軒下に駆け込む。


「あーあ、最悪……」


制服のシャツやリボンは、雨でびしょ濡れ。


雨足は弱まるどころか、どんどん強くなって、ちっとも止む気配がない。


どうしよう。このままじゃ、家に帰れない。


小雨になるまで、ここで雨宿りするしかないのかな……。そう思ったときだった。


私の隣に、すっと差し出された1本の傘。


顔を上げると、そこにいたのは幼なじみの湊斗だった。


サッカー部の練習帰りなのだろうか、彼はジャージ姿だ。


湊斗の短く整えられた黒髪が、雨に濡れて少しだけ光っている。


「しずく。良かったら、俺の傘に入ってく?」