放課後。俺は教室を出て、しずくの友人である森谷七海を探した。
あっ、いた。
森谷は、下駄箱で靴を履き替えようとしているところだった。
「森谷!」
俺が声をかけると、森谷は驚いたように振り返った。
その顔にはいつもの明るさはなく、心配の色が濃く浮かんでいる。
「湊斗くん……」
「しずく、最近学校に来てないだろ。連絡はとってるのか? あいつの様子はどうだ?」
俺が尋ねると、森谷は唇をきゅっと結んで、うつむいた。
「わたし、しずくに毎日メッセージを送ってるんだけど、返事がなくて……電話にも出てくれないの」
森谷の声は、小さく震えていた。彼女もしずくのことを心から心配しているのだと、その声からひしひしと伝わってくる。
「きっと、すごく傷ついてるんだと思う。学校に来たくない気持ち、わたしには分かるから……」
森谷の言葉に、俺の胸は苦しくなった。
しずくは今、どれほど深い孤独の中にいるのだろう。
あの小さくて繊細な心が、打ち砕かれてしまうのではないかという不安が、俺の胸をよぎる。
「……わかった。今日は部活も休みだし、俺、しずくのところに行くよ」
俺は、森谷を見つめた。森谷は、少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに大きくうなずいた。
「ありがとう、湊斗くん……。しずくのこと、お願い」
「ああ」
森谷の言葉に俺は首を縦に振ると、昇降口を飛び出した。
早くしずくに元気になって欲しい。どうすれば、あいつに笑顔が戻るだろうか。
しずくの好きなものは……そうだ。
しずくの家に向かいながら、俺はしずくが一番好きなフルーツタルトを焼くことに決めた。



