最強パティシエは、幼なじみに恋をする



最初こそ、周りの速さに焦りかけたけれど、湊斗からの『ペースを考えろ』というアドバイスを思い出して、深呼吸をして呼吸を整えた。


苦しいけど、一歩、また一歩と、前へ進む。


グラウンドの芝生は、霜が降りて白っぽく光って見える。ときどき、ひんやりとした乾いた土の匂いがした。


校門を出ると、沿道からは先生たちの「頑張れー!」という応援や、保護者の「ファイトー!」という声援が聞こえてくる。


みんなの声が、重くなった足をわずかに軽くするようだった。


私のすぐ後ろには、約束通り、七海がぴったりとついて走っていた。


「しずく! 一緒に頑張ろうね!」


息を切らしながらも、いつもの明るい笑顔で声をかけてくれる七海。彼女がそばにいてくれることが、今の私にとって何よりも心強かった。


「うん。頑張ろう」


それから、長いコースを私はひたすら走った。


息はだんだんと苦しくなって、足は本当に鉛みたいに重くなっていく。けれど、七海の励ます声が聞こえるたび、私は少しずつ前に進むことができた。


校舎の白い壁が遠ざかり、体育館の屋根が見えてくる。


大きく息を吸い込み、フーッと吐く。冷たい空気が肺に染み渡り、少しだけ体が軽くなる気がした。


カーブを曲がり、緩やかな坂道を上り切ると、遠くのほうにゴールのアーチが見えてきた。


「しずく。あと少しだよ!」


七海の弾んだ声が、背後から聞こえる。


私もゴールのアーチを目がけて、最後の力を振り絞った……そのときだった。