「わあ、可愛い」
それは、桜の花の形に焼かれた小さなクッキーだった。
クッキーと一緒に、シンプルなメッセージカードも添えられている。
《頑張れ》
カードには、たった一言。だけど、その言葉が私の胸に温かく響いた。
誰からだろうと周りを見回すと、少し離れた場所に湊斗の姿が見えた。
もしかして……?
湊斗の姿を目で追っていると、ふいにこちらを向いた彼と目が合ってしまった。
湊斗は私に気づくと、すぐにフイッと視線をそらしてしまう。
そんな湊斗の耳が、ほんのりと赤くなっているように見えたのは、きっと気のせいじゃないはず。
「ふふっ、湊斗ったら……」
私は、このクッキーが湊斗からの贈り物だと確信し、胸がいっぱいになった。
「いただきます」
さっそく封を開け、口に入れたクッキーは、じんわりと優しい甘さで、ホロホロと口の中で溶けていく。
バターの香ばしさ、そして桜のほのかな風味が口いっぱいに広がった。
それは、まるで湊斗のように温かくて、彼の優しさがそのまま形になったような味だった。
マラソン大会に向けて、頑張ろうとする私の背中を、そっと押してくれる。
湊斗がそばにいてくれることで、マラソン大会への不安な気持ちが、少しずつ前向きな「頑張ろう」という気持ちに変わっていった。



