ある日の練習中。少し疲れて、油断してしまったのだろうか。
私は走っている途中で、足がもつれてしまった。
「きゃっ!」
体がぐらりと傾き、今度こそ転んでしまう……!
そう思ったとき。
サッと、温かい手が私の右腕を掴んだ。
「気をつけろ」
湊斗の声が、耳元で響く。彼の顔は、いつもと変わらず冷静で、私をまっすぐ見つめていた。
だけど、その目には、私を心配する優しい光が宿っている。
冷たい冬の空気のなか、湊斗の手のひらから伝わる温かさが、私の心にじんわりと染み渡る。
その手が、まるで私の心をそっと包み込み、守ってくれるようだった。
その一瞬、彼が私の力の強さに気づいてしまうのではないかと不安になったけど……。
それ以上に、湊斗がそばにいてくれることの嬉しさが勝った。
マラソン大会が近づき、練習にもより一層力が入るようになった、ある日の放課後。
私は、下駄箱で上履きからローファーに履き替えていた。
冷たい風が下駄箱の隙間からスウーッと吹き抜けてきて、思わずぶるりと身震いする。
いつものように、上履きをしまおうとしたそのとき。
……あれ?
私は、下駄箱の中に何か小さなものが挟まっていることに気づいた。
何だろう?
首を傾げつつ、そっと取り出してみると。



